TPOのメンバー中で一番最初に出会ったのは岩崎工さんだが、今回はその岩崎さんを紹介してくれた同級生のK一郎くんやサークルのことなど。
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このK一郎くんという人がなかなか多才な変わり者で、当時まだ月刊だったan an(an anはその後1日・15日刊、10日・20日・30日刊、を経て週刊になった)を欠かさず買っていたり、資生堂のフリーペーパー「花椿」のアートディレクションがいいからと、化粧品店で手に入れたりしていた。
彼はイエスのクリス・スクワイアのゴリッとしたベースが好きで、リッケンバッカーにいつも下ろし立ての弦を張って弾いていた。プログレが、一通りはたしなむべき教養になっていた時代だったように思う。
僕がRhodesを買ったのを知り、何か一緒にやろうと誘ってくれた。
それで、いっしょに軽音楽同好会の春休み合宿に行くことになる。場所は「北軽ホリデイ」という宿泊設備のあるリハーサルスタジオで、鬼押し出しにも近く、昔浅間山の噴火で亡くなった人たちのお化けが頻繁に出るとのうわさもあった所だ。
まだ関越が途中までしかない頃で、からっ風で砂嵐のように舞い上がる土ぼこりの中をバス2台に分乗して行った覚えがある。
1978年の2月の出来事。
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二人だけで参加しているので、ベースとキーボードにRolandのリズムマシン(たぶんCR78か68)という、期せずしてテクノ?な編成になってしまった。
最終日には発表会があるので、このユニットでも一応何かは仕上げてご披露しなければならない。とにかく1曲は「ソフト&メロウ」なフュージョンぽいオリジナルをでっち上げて、テクノな編成で。あとは寄せ集めメンバーのセッションに混ぜてもらうことになった。
今も社会人バンドとして活動なさっているらしいCity Voyageの人達と荒井由実の「中央フリーウエイ」「雨のステーション」や、ガラッとジャンルが変わってブライアン・フェリーの「Let's Stick Together」なんかをやった覚えがある。
16のチャカポカした軽快なギターのカッティングに乗っかるのは理屈抜きに気持が良かった。
*CR78については安西氏のサイトをご覧ください。
http://synth.fool.jp/os_vsm_5/cn78/cn69/cn89/pg975.html
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当時上智の軽音は成蹊や国学院や青山学院と交流があって、国学院からは鷺巣詩郎氏がNOVAという混成部隊を率いて参加していた。
鷺巣さんは薄紫のテレッとした女物のカーディガンなんか羽織っていて、華僑の金持ちみたいなオーラがあった。聞いた話なので真偽のほどはわからないが、「北軽ほりでい」の風呂は女湯にしかシャワーがなくて、彼は長い髪を洗うのに女湯のシャワーを使わせろと駄々をこねていたという。
自分にはそういうところで要求を通そうとする発想は無かったから新鮮で妙に感心した覚えがある。
しかし、あの時のNOVAの演奏には本当に度肝を抜かれた。正確な編成は覚えていないけれど、数本のブラスをフィーチャーし、ドラム×2、パーカッション、ベース、ギター×2、キーボード、それにコーラスもいたかな?。
発表会も半ばで、そろそろ完全な宴会モードになりつつあるみんなの前に、いきなりクインシーやハービー・メイソンばりの斬新でゴージャスなサウンドが飛び出してきた。鷺巣さんはソプラノ・サックスを吹いていたように思う。もうちょっと聞いていたいという曲ばかりだった。
どこか遠い所にいるプロがレコードの中でやっていることで、自分とは接点が無いように思っていた出来事が目の前で起きていた。
同年代で、こういうすごいことが出来る人達が実在するんだと、興奮し感動した。
(鷺巣さんには、ずっと後の1989年に、筒美京平先生プロデュースの田中律子さんのアルバムに僕が書かせていただいた「虹のMagician」という曲のアレンジをしていただいたことがある。)
その後、Something Specialと名乗って高田馬場のBIG BOXで密度の濃いフュージョン(一方に、ひたすら密度が薄く形骸化した後期フュージョンがあるわけです)を演奏していたグループがNOVAから発展したプロジェクトだったと思う。
とにかく、70年代後半、フュージョンと命名された音楽は全盛期を迎えつつあった。
そして当時の僕にとって「電化マイルス~マイルス・チルドレンが始めた初期のフュージョン」は、娯楽というよりは御修行で、居ずまいを正して聴くべきものだった。(実際、正座して聴いてましたから。)
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・・・と、いった機運の中、いよいよ岩崎さんや安西くんに出会うことになるが、今日はこの辺でお開き。また次回お付き合いください。

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TPOのメンバー自身が語る70年代後半~80年代前半、
あの日あの頃。
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福永柏の連載をすべて見る

◆Rhodesが来た◆
1977年に大学生になって東京での生活が始まった。
77年といえば、ピンク・レディーの「カルメン’77」から思い起こすに、昭和歌謡が最後のピークを過ぎつつある時期だったように思う。
そして、後にTPOにつながる展開はこの年に端を発した。
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とりあえず僕は、下町の方に住む親戚が自宅裏に持っていたアパートに住むことになった。たぶん4畳半だったけれど、そんな虫籠みたいな所に平気で住んでいられたのだから、今より閉所恐怖は軽かったようだ。近くに銭湯がいくつもあって気分によって違う所に行くのが面白かった。
少し歩くと隅田川で、その途中には「蔵前」国技館があった。
受験生という縛りはなくなったのだから、ラジカセよりはいい音で音楽を聴けるようにしようと思い、機材漁りに何度か秋葉原に足を運んだ。
当時、秋葉原はパーツとオーディオの街で、駅を降りるとハンダのペーストに含まれる松ヤニの匂いが漂っていた。「国電」の駅構内のショーケースにもトリオや山水の高級オーディオ(カットして断面を見せたりもしていた)や八重洲の無線通信機などが展示されていたり、ラジオ会館のエレベーターに乗ると、自転車ごと出前の人が乗ってきたり、と・・・今より濃厚で圧倒的に硬派の町だったように思う。ある意味築地みたいな町だったかもしれない。そういえば青果市場もあったことだし。
(この頃既に安西君は秋葉原のローランドの開発室に出入りしていたわけですね・・・)

とうとうメンバーが重い口を開いた!
TPOメンバーの福永柏がTPOを取り巻く「あの頃」70年代後半~80年代を語ります。
福永さんと言えばその卓越した音楽性と共に当時、TPO1の美少年ぶりでも有名。プロデューサーの片柳氏自ら「福永はTPOのビジュアル対策を音楽性と共に期待していた」と語るほど。
そんな福永さんの見た当時の景色が蘇ります。
フィルムス周りの人脈も色々登場するので、ニューウェーブファン、サブカルファンも必見の連載です。
福永さんは現在ソロアルバム準備中ですので、その情報も合わせてお届けします。どうぞご期待下さい!
福永柏の連載をすべて見る
「TPOの真実」もしくは「もやもやTPO」 1
◆ 前口上 ◆
親切でエネルギッシュな当ブログの管理人さんが、「TPOの真実」というタイトルで何か書きませんか、とお誘いくださいました。今更シブがってる年齢ではなし、ありがたくお引き受けさせていただきました。
とはいえ、正確さが要求される研究資料のような物は自分の役目ではなさそうですし、TPOのメンバーは品行方正だったので芸人のような暴露ネタもありません。たぶん・・・
しばらく悩んだ末、あの時代の他愛のない日常を掘り起こせば、古い雑誌みたいにそこそこ面白いのでは、と思えてきました。あの時代とは、学生で楽隊ごっこをしていた70年代末からTPO騒ぎの80年代半ばくらい迄のことです。
その時、その場に、たまたま居合わせなければ出会わなかった瑣末なエピソード。まさにTime Place Occasion。うまいっ!
というわけで、TPOという「縁」を生んだインフラをお伝えすることで、あわよくばTPOとその周辺の音楽に対する理解と愛を深めていただこうという趣向となりました。
人間の脳はホログラフィックだそうですから、断片的な周辺情報がトリガーになって飛躍的に全体像がクリアになることだってある筈です。
ただし、僕の文章にそういうイメージの喚起力があるかどうかはまた別の問題ですが。
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タイトルは、前述のように「TPOの真実」という、なかなかキレのよいのを戴いていたのですが、遠からず大きくブレてお叱りを受けるのは必定ですので、あらかじめ逃げ道を用意しておきました。
だから、「真実」でない時は「もやもや」です。
今後ともよろしくお付き合いください。
2009年10月吉日 福永 柏
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「小山田圭吾の中目黒ラジオ」エンディングテーマ
sundog 収録アルバム。
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TPO結成前の前段階ユニット
「PROJECT GREEN」
28年眠り続けていた
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